おちょぼ
【初演】平成21年
■作詞:苫舟 ■作曲:大和櫻笙
〽色町の朝も早う起き 襷掛け 釜戸掃除に 床磨き
アイタチコ アイタチコ
アイタ アイタ アイタチコ
姐さんたちを起こさぬように あさげの支度の忙しさ
「おかあさん おはようさんどす」
「おはようさん」
「お稽古に やらしてもらいます」
「踊りか? いっといでやす」
「おおきに お母さん」
〽門へつまずき おぉ危な お稽古事は数々ござる
三味に囃子に 踊りの稽古
〽わしが在所は 京の田舎の片ほとり
八瀬や大原に 牛曳いて
柴打盤(しばうちばん)床几頭(しょうぎあたま)へ ちょいとのせ
梯子買わんせんかいな 黒木買わしゃんせ えぇ
「これおいどがでてますえ」
「すんまへん」
「うちは見込みがあらへんのやろか」
〽生まれ故郷村里で畑小町と名を得しも
都で見たれば何の小町であろぞいな 恋をするのも命がけ
〽わしが想うは木屋町の 踊りの師匠の若さんで 都一の色男
二人で歩けばつり合わず 一緒に踊れば見てられぬ あぁ
〽叶わぬ恋をこの胸に 隠していつかはこの街で
一番華を咲かせると 幼心の可愛ゆらし
【解説】
平成二十一年、大和櫻笙と苫舟(藤間勘十郎)による作曲発表会『櫻舟』の第一回公演において初演されました。
「音草紙童絵日記」として、初演時には「おちょぼ」を〈上〉、苫舟作詞作曲による長唄「丁稚」を〈下〉として続けて演奏されました。
田舎町から京の花街に売られてきた女の子のお話です。朝の花街・お稽古の様子、決して器量良しとは言えない女の子の片思いの様子を描いています。大和楽の作品では珍しい芝居仕立ての作品に仕上がっているのは、芝居に精通した苫舟の面目躍如たるところです。