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浅茅の路(あさじのみち)

【初演】昭和62年
■作詞:油井宏典   ■作曲:大和久満

〽花の波 霞の衣 着そ初め 四季折々の楽しみは

〽春は先ず 七福神の初詣で めぐり三囲(みめぐり) 願いは内に 

〽花もゆかしき 長命寺

〽縁を橋場に 竹屋の渡し うれしの森と花川戸

〽庵崎恋し 隅田川 〽その往古(いにしへ)を言問へば

哀れもさぞな 梅若塚に通ふ雨

〽馴れて逢ふ夜は 誰白髭の 目顔で知らせ 首尾の松

〽舫(もや)ふ灯影も 口舌して 白けて通る 夜の雨

〽照り増さる 想ひ山谷に行き通ふ やつす姿の舟唄は

〽舟を出しゃらば 夜(よ)深(ぶ)かに出しゃれ 

エイエイエイ いとし姿の見え隠れ

〽日本堤の神さんへ 無理な願いも 恋の知恵 

エイエイエイ 誰に知られん こともなし

〽見返り柳 雪持って 名残を惜しむ 後朝(きぬぎぬ)の

しっとり撓(たわ)み 寒そにござる

〽火桶やりたや 炭添えて 〽やりたや火桶 炭添えて

〽送る譲り葉 松竹を 商ふ声も賑わしく 

〽早や浅草市や 節季(せき)ぞろが

〽唄う初音の梅屋敷 色も香(か)をも知る人の 

〽皆をしなめて 新玉の

〽年々此處に群れ集ひ 浅草寺の 鐘の声

【解説】

昭和六十二年八月に、国立大劇場にて第三十五回華扇会の舞踊会にて初演。振付者の藤間友章氏が演じました。

隅田川の両岸の名所や旧跡、それに因む故事を詠い込んだ作品です。

春は「七福神の初詣」で、三囲神社から長命寺、謡曲「隅田川」でおなじみの梅若塚にと移ります。途中、舟唄もあって川の水も澄んでいた良き時代の隅田川の情緒を彷彿とさせます。

締めくくりは、浅草市の賑わいと、新年を迎えて浅草寺に初詣する人々の描写になります。