あすなろう
【初演】昭和52年
■作詞:仁村美津夫 ■作曲:大和久満
〽みどり濃き 花のあたりの翌檜(あすなろ)
〽あすなろう 木曾の五木の一つと言はれ
その木は しなやかにして艶を持ち 姿良き桶となり
褐色の皮は美しく 風流なる屋根を葺く
〽山深く空に聳ゆる 桧の大樹
枝を伸ばし葉を繁らせ 大地に強く 根を張る
嵐にも雪にも負けず 亭々として 天を支ふる(さそおる)
〽香りを放つ巨(おお)き桧の下蔭に あすなろうは雨風を避け
可愛く育つ
〽桧の高き梢を見上げ いつの日かこの巨き樹に並び立つ
王者のごとき姿を夢見る 〽あすは桧にあすなろう
〽山ざくら 峯に咲き満ち 杣人(そまびと)の 唄ものどけき
〽山に伐る木はたくさんあれど 思い切る気(木)は さらにに無い
〽咲いたさくらに松杉桧 どれが婿やら気がもめる
〽桧松杉 およびも無いが せめてなりたや あすなろう
〽風雪の歳月はゆく あすなろうはなほ小さけれど
青き葉の色は変わらず 望みは高く 高く
〽今日もまた 苔むしたる 桧の高き梢を見上げ
〽あすは檜にあすなろ あすは檜にあすなろ あすなろう
【解説】昭和五十二年4月十六日、若柳流「東川会」に於いて、若柳東穂が初演をした曲である。
山奥で育った小さなあすなろうの木が、厳しい風雪に堪え、桧の大樹をみては自分もあすは見事な桧の木になろうと夢みることをテーマに、木曽の山中を背景にした踊りで、作者は教訓的な意味ではなく、可愛い小さなあすなろうの木と、桧の巨木とのコントラストや、山奥の静寂な世界、そこに鄙(ひな)びた詩情を、杣人(そまびと)の唄で聞かせる趣向だと言っている。
この曲は、そうした作者の意向通りに自然の営みの中での、詩情豊かな作品を、作曲の大和久満が大和楽らしい味を盛り込んで仕上げた美しく力のみなぎる作品である。
