夜の梅
【初演】昭和24年
■作詞:長田幹彦 ■作曲:宮川寿朗
〽空解けの 帯も哀しや 夜の梅
闇路ほのかに 香をとめて
涙も凍る白梅の 思いのたけを縮緬(ちりめん)の
袂にあまる かねごとも
未練じゃと笑わしゃんすな そなた故
〽乱るる心 夜の梅 闇に淋しく散るぞえな
〽あれ わっけもない 忘れねばこそ移り香の
野郎帽子に梅花の香り 色さえ深き 濃紫
あの灯に背けた顔の憎らしい
〽芸が命のわざおぎの 心と知らで身を捨てて
迷う恋路の重ね褄
〽今はかいなき 白梅のうら 恥かしく
しどもなや 屏風に白む 片割れ月
【解説】
昭和二十四年の作品である。昭和三十三年、大阪の歌舞伎座で一カ月、長谷川一夫・中村扇雀の両氏で上演されました。
藤十郎とお梶の物語で、お梶の思慕がテーマになっています。聞きどころの一つ「芸が命の~迷う恋の重ね褄」では、お梶は藤十郎の立場は納得できても、自分の恋を失うのは納得できない。といったお梶の心のうちが表現されている。この「夜の梅」に「雪折竹」の『わきて節』を加え、ドラマティックに演出されることもある。