【初演】昭和22年頃
■作詞:田中青滋   ■作曲:岸上きみ

(三下り)

〽朝の戸をくる舟 ここにもやい舟 隙間(かいま)見るとも知らぬげに たのしき 今朝のあさかしぎ

〽舟べり洗う藁ぼっち したたり涼し 川の面

来て見や今日も良い日和 残る月影東雲に

永代寺の鐘の声

〽両国のさて昼中の賑わいは 芝居あやつり

浄るり一座

〽さァさ 見ないと損だよ 代は見てのお戻りだよ

やれそれ それそれ娘手踊り「さァさ 見なはい見なはい」 煮花もよしや 酒もよし

戻りにきっと お寄んなさいね

〽さァさ これは隠れもない 皆様方のおなぐさみ

商う品は 大ごま小ごま えにしの糸を

きりりとしゃんと 巻いて投げては えいと引く

廻るは廻るは 世帯の上手 黄金(こがね)ぜにごま

うなりごま ごんごん独楽のなり強く

天下とる取る 投げどりの曲は さまざま

〽花見ごろもは いとわねど 降るな散らすな

花は三日が定めじゃものを

薄ずみの空より落つる 銀の糸

(本調子)

〽宴なかばの 恨みをのせて 雨に呼びこう戻り舟

〽夕潮の何を囁く したしたと 見れば朧の舟の内

仇な二上がり 爪弾きは 忍び逢う夜の 首尾の松

(二上り)

一夜(ひとよ) 斯(か)く すぎて行くなり

河水は 河水は ただ唯 悠々と流れゆくなり

月なめらかに 流れ行くなり

【解説】

昭和二十二年九月に作曲され、翌年五月毎日ホールにて「第一回大和楽研究会」で演奏されました。

第一景、まだ月影の残る早朝のもやのかかった隅田川の情景を前奏より低音三味線を用いて表現され、船べりを洗う波の音が聞こえる程の静かな様子がよく表わされている。

第二景は、当時一番賑わいをみせた両国橋畔の描写。芝居、あやつり浄瑠璃一座の様子が(三味線の義太夫の三十三間堂の柳の合の手)を交えて表わされ、水茶屋の女の声が艶っぽく客寄せをしている様子が表わされている。

第三景は、薄ずみの空から降る雨の様子と花見の宴もまだ半ばに戻る舟の様子を表している。三味線の合方を聞いているだけで雨足のだんだん強くなる様子が感じられる。

第四景は、夕闇の迫りくる隅田川の辺り、急に淋しくなってきて聞こえる端唄の二上りさえ、あだな爪弾きと思われる風情がよく表わされている。

そうしたただ悠々と流れ行く河と人の世の移りゆく様の描写の対比が表現された素晴らしい曲である。その後、舞踊家西川鯉三郎氏によって大和楽の「こま」の「さァさこれは~曲はさまざま」が加わった。