おせん
【初演】昭和20年
■作詞:邦枝完二 ■作曲:宮川寿朗
(三下り)
行水の おせん描いた紅筆を
水に落とした 夕間暮れ
廻りどうろ(燈籠)がくるりと廻る
江戸の昔を今の世の
夢の雪岱 あで姿
帯は空解け 柳ごし(腰)
咲いた桔梗のひと片が
仇に散ったか蚊帳のかげ
こうもり来い
暗燈の光をちょいと見てこい
道行の おせんかくした青すだれ
萩に流れる 蚊やりをよそに
廻りどうろ(燈籠)がくるりと廻る
【解説】
作詞は邦枝完二氏、作曲は宮川寿朗氏によるもので、昭和二十年十月の作品である。
舞踊家の西川鯉三郎氏が初演、戦後まもなく女優の山田五十鈴が主演映画の中で、また昭和四十九年二月には国立劇場で開かれた鯉風会で女優の山本富士子が演じた。
三下りのこの曲は、江戸の風情を表わしては巧みな宮川調といえる作品で、日本画家の小村雪岱の「おせん」を描いた廻り燈籠をテーマに、行水を終えた夕間暮れの江戸の情趣が詞と唄によく表現されている。
曲の結びの「廻る」の部分は美しい輪唱とハミングとなり、この作品の聞きどころになっている。 舞踊曲としても鑑賞曲としても人気のある曲のひとつである。