おぼろ月(おぼろづき)
【初演】昭和18年頃
■作詞:木村富子 ■作曲:大倉聴松
〽富士の山ほど 思ふこと
半ばも書かで やる文は
また逢うまでの なぐさめに
逢はで 幾年 夢に見る
人は果敢なや 春の夜の
おぼろ月より なを おぼろ
しやほんに 水の月影
山ン彦 にくらしいが 浮世ぢゃえ
【解説】昭和十八年頃の作品。この曲は初代家元大和美代葵のために作られたもので、唄い初めの「富士の山」の箇所をいきなり高音で唄い出すよう作曲されている。
三下りのこの「おぼろ月」は、想う人に文を書く女性の気持ちと、おぼろ月の晩を巧みに描写したもので一中節の粋な表現も加わっている作品である。