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傘の内(かさのうち)

【初演】昭和15年頃
■作詞:島崎藤村   ■作曲:岸上きみ

〽二人して さす一張りの 傘に姿を包むとも

情の雨の降りしきり 乾く間もなき袂かな

顔と顔とを打ち寄せて 歩むとすれば なつかしや

梅花の油 黒髪の 乱れて匂う傘の内

〽恋の一と雨 ぬれまさり 濡れて恋しきゆめの間や

そめてぞ もゆる紅絹(もみ)うらの 雨に悩める足まとい

〽うたうを聞けば梅川よ しばし情を捨てよかし

何処(いづこ)も恋にたわむれて それ忠兵衛の夢がたり

恋しき雨よ 降らば降れ 秋の入り日の照りそいて

傘の涙を干さぬ間に 手に手を取りて 行きて帰らじ

【解説】島崎藤村氏の作詞と岸上きみ氏の作曲による昭和十五年頃の作品であり、宮薗風曲調の道行物を舞踊家の吾妻徳穂氏が浮世絵風の情趣をとり入れて舞踊会で発表したことがある。当初は「恋の一と雨~忠兵衛の夢がたり」迄は抜いて演奏していたが、今回の録音ではクドキとして収録され、この曲の聞きどころとなっている。低音の三味線の落ち着いた音色がよく合う曲で「梅川忠兵衛の大和楽版」というところである。

曲の内容は、降りしきる雨は冷たくとも、二人してさす傘は温かい、道の遠いのも忘れて心の中は語りつくせぬ程である。といった男女の恋の気持ちを美しく唄ったものである