水郷(すいきょう)
【初演】昭和14年
■作詞:大倉聴松 ■作曲:大倉聴松
〽外浪逆浦 水郷行けば
十六出島 十二橋
緑の真菰 藍の水
筑波の嶺は うす霞
夢ともまごう 景色かな
〽紺のつつそで 紅のすそ
姉(あね)さ 小舟を あやつりて
風に乗せ来る 舟歌は
〽櫓なら三月で漕げもしょが
棹は三年 まださせぬ
【解説】
作詞作曲とも大和楽創設者である大倉喜七郎こと大倉聴松によるもので、昭和五年六月初旬、北支から来朝した友人を案内して、佐原から十二橋を過ぎて心ゆくばかり湖辺の風物を味わった時の追想の作品である。
大倉氏は自作のオークラウロという笛で作曲をした為、高音のたっぷり出る声を意識し、大和美代葵のために作曲をした。節は一中節の気分を取り入れたりと適宜変化をつけて表現の豊かさを狙ったものである。曲の後半には舟唄がつけられ水郷のなごやかな気分が描きだされ、聴くものにその地に遊ぶ想いをさせる。昭和十四年十一月八日、新橋の仁寿講堂の大和楽団第二回定期演奏会で演奏された
