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三十石の夜舟

【初演】昭和13年頃
■作詞:笹川臨風   ■作曲:岸上きみ

(三下り)

日は遠近(おちこち)に 呉竹(くれたけ)の

伏見の里を舟出して 淀の川瀬の楫枕(かじまくら)

水にくるくる 車の音の 夢に結びし 千両松

その姿さへ 男山 誰(た)が手ずさみの 小夜砧(さよきぬた)

つい うっとりと うたた寝の 覚めてくやしき 苫の外

ヤレー ここは牧方(ひらかた)よ  かぎやが裏じゃよ

綱も碇(いかり)も 手にゃつかぬよ ヤーレサ ヨイヨイヨー

「おゝい 勘六さんいな その舟 下りかえ」

「おゝい」

「下りやったら 大阪(おおざか)で  鬢付(びんつ)け 買(こ)うて来てや

「おゝい 合点じゃ」

酒くらわんか あんころ餅 くらわんか

そっちのわろ ねぶた目覚ませ ごんぼ汁くらえ

つどう小舟のかしましや 更けて川風 身にしみじみと

棹のしずくに宿る月影

【解説】

作詞は文学博士の笹川臨風氏、作曲は清元・常磐津・哥沢と幅広い芸の持ち主の岸上きみ氏による昭和十三年頃の作品。

淀川を上下した『三十石舟』と「酒くらわんか、あんころ餅くらわんか」と、その舟に酒や食べ物を売りに来た『くらわんか舟』との様子がセリフにもなっており、文学者と芸人の組み合わせによる作品は、当時から大変人気で現代でも聴く者を大変楽しませる洒落た作品であります。

また、冒頭の歌詞「日は遠近に呉竹の」と最後の「棹のしずくに宿る月影」をつなげると一つの句になるのではないかと言われております。