楊貴妃（ようきひ）

大和楽　楊貴妃　　　　　　　　　小川清子　作詞・大和久満　作曲

〽玄宗皇帝　唐国(とうこく)を治め　之(これ)ぞ開元(かいげん)の治(ぢ)

〽都(みやこ)長安(ちょうあん)の辺(ほと)り　楊家(ようけ)に一女(いちじょ)有り　君(きみ)に召されて　咫尺(しせき)に侍(はべ)る

〽黒曜(こくよう)の眸(ひとみ)またたけば　後宮(こうきゅう)三千(さんぜん)の美を一身に

　庭中(ていちゅう)紫梅(しばい)　香るの日　洛(よく)を賜う　玲瓏(れいろう)の水に　雪の肌を輝(かが)よう

〽新窓(しんそう)の育ち　俗塵(ぞくじん)に　触れず清らか

　玉(たま)の顔(かんばせ)は　はぢらひ　紅(くれない)の色に染まりて

　牡丹花(ぼたんか)　嫣然(えんぜん)薫(くん)ず　帝(みかど)は華色(かしょく)に溺れ　朝(まつりごと)おろそかに

〽春は花の宴(うたげ)　錦繍(きんしゅう)の袖と袖　酔うて相和(あひうた)うは　常(とこ)永遠(とわ)に褪めぬ　愛の誓い

〽漁陽(ぎょよう)の鼙鼓(へいこ)　地を響動(とよ)もして来たる　九重(きゅうちょう)の城闕(じょうけつ)　煙塵(えんじん)生(しょう)じ

　翠華揺揺(すいかようよう)として　行きて　復(また)止まる　宛転(えんてん)たる峨眉(がび)　馬前(ばぜん)に死す

〽悲傷(ひしょう)の君王転展(くんおうてんてん)の想い　峨眉山(がびさん)　蕭索(しょうさく)思(おもい)悄然(しょうぜん)　道士(どうし)碧落(へきらく)黄泉(こうせん)に覓(もと)む

〽夜半人(やはんひと)無(な)く　両心(りょうしん)の誓(ちかい)　七月(しちがつ)七日(なぬか)　長生殿(ちょうせいでん)

〽天に在りては　比翼(ひよく)の鳥(とり)　　地に在りては　連理(れんり)の枝(えだ)

　誓い果せぬ　長恨(ちょうこん)の歌(うた)

【解説】

大和楽創設七十周年記念曲として大和久満が作曲、平成十六年（２００４）

大和楽演奏会（国立劇場）にて発表されました。

中国・唐代を代表する詩人・白居易（白楽天）の代表作『長恨歌』を下敷きに

小川清子氏が新たに書き下ろした作品です。

原詩は全部で百二十句からなる長編で、唐の玄宗皇帝と楊貴妃との愛と悲しみを

つづった七言古詩であります。

このあまりにも有名な一大叙事詩が大和楽でどのように表現されるか。