雨
【初演】平成3年
■作詞:岩田道之輔 ■作曲:大和久満
〽雨が そぼ降る池の面(おも)
燕が低く 飛んでゆく
あれは去年(きょねん)のあじさいが
色鮮(あざ)やかに咲いた日の
無理な 願いの朝参り
〽光る涙か 恋しずく
けなげに受けし蓮の葉に
そっとわが身をくらぶれば
夏立つ今日の 池の端(は)に
鐘は千里も 響くのに
【解説】平成三年『大和楽ひともじ舞踊特選』の一曲として発表された。
静かに降りしきる雨の池のほとりを舞台に、紫陽花の咲く季節の追憶と、胸の内に秘めた恋心をしっとりと描いた一曲である。低く飛ぶ燕、雨に濡れる池の面、蓮の葉に受ける雫――移ろう自然の情景が、主人公の繊細な心の揺れと重なり合い、深い余情を生み出している。
「あれは去年のあじさいが 色鮮やかに咲いた日の」と回想される過ぎし日の想いは、今なお胸に残り、叶わぬ願いとして静かに響く。蓮の葉に受ける雨のしずくを、自らの涙に重ねるくだりには、ひたむきで切ない女心がにじみ出る。
雨音とともに広がる叙情の中に、恋の哀しみと美しさを映し出し、大和楽ならではの情艶と品格を感じさせる作品となっている。
